Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “とりあえず だっこ”  〜バカップルな二人へ10のお題より B
 

すったもんだの九月が過ぎゆき、
涼しい風が吹き始めたねぇとの声に
合わせるかのようにやって来たのが今年の10月で。
キンモクセイの匂いとか、サンマを焼く匂いとか。
あとあと、ケーキ屋さんとかに
カボチャのお化けや黒いお帽子の魔女の
“はろいん”の飾りつけが目立つようになって来て。
ママが毎朝新聞取りにって お外へ出てくのが早くなったのは、
ついでに塀の周りの落ち葉かきをするからで。

 「朝とか夕方とか、そいえば寒くなったもんねぇ?」

でもでもお昼間まで経たないうちに、
まだまだ夏は帰んないよって言ってるみたいなほど、

 「駆けっことかしたらば、
  汗いっぱいかいて暑いんだけどもねvv」

だから脱いじゃったのという、
合服だろう薄手のパーカー、
小さなお背(おせな)に背負ってたデイバッグへと着せて。
ボーイソプラノでの“キャーイーvv”という歓声も愛らしく、
ぱたたたた…っと駆けて来た、
王城ホワイトナイツ専属の小さなマスコットボーイくんこと、
小早川さんチの瀬那坊を。

 「………っ。」

ササッとかがんで真っ向から受け止めんという態勢になる、
高校最強ラインバッカーさんであり。
屈んでやっと
同じほどの目線となるようなおちびさんが相手だというに、

 “何でまた、そうまで周到にって構えるかな。”

試合中の気迫さえ感じられそうな真摯な表情で待ち構える、
フィールドの鬼神様も鬼神様なら。

 「やーーーーっっ!!」

一丁前にも スタンディングスタートのポーズを取ってから、
いっせぇのとそれは勢いよく駆けて来る、
小さな坊やも坊やであったりし。
おいおい おいおいと、ここまではやや呆れ顔で、
彼らの“こんにちは”へ付き合っていた桜庭さんだったものの、

 「おおお、何か速くなってる?」

たったかたったかと駆けて来た小さな坊やが、
思っていたよりもいい加速でもって突進して来たものだから。

 「とぉちゃーく♪」

頼もしい両腕の中へ、ぱふんと受け止められたそのまま、
きゃははvvと無邪気に笑う坊やではあったが。
普通の中肉中背の大人が、
しかもあの勢いと知らずに待ち受けていたとしたならば、

 “ぶつかり負けしていたかも知れないねぇ。”

成程、進の構えも頷けるかも?と、
今更 妙な納得の仕方をしてしまった
桜庭さんだったりして。(って、おいおい・苦笑)

 『あんねあんね、今日から3連休でしょお?』

そして明日は関東大会の準々決勝とあって、
こちらさんでも さほどハードなそれじゃあない練習にて、
最終調整にかかることとなっていたものだから。

 『セナもおーえんの練習に行っていい?』

そんなお願いをされたのでと、
合宿中の身の彼らが寝起きする学校の、
正門前までお出迎えに出て来ていた二人だったのであり。そして、

 「葉柱くんのバイクで来るのかと思ってたんだけど。」
 「そういつもいつもご期待には添えねぇよ。」

何を“大好ゅき〜vv”な再会シーンになっとるかと呆れたか、
微妙な伏し目がちという、仏様のような半目になってたお連れさん、
蛭魔さんチのヨウイチくんが、
小さなセナくんに続いて降り立った車というのが、

 「じゃあな、帰りは他の奴を呼ぶんだな。」
 「おお。ありがとな、ムサシ。」

丁度 こっち方向の現場へ向かうスケジュールだったのを、
そりゃあお見事にチェックされており。
軽トラに乗っての移動中だったところを、
やや強引に携帯で呼びつける格好で、
武蔵工務店の二代目棟梁に送らせたのは…確かにお珍しい。

 「まあ ついでじゃああったしな。」

別段、何かを形代に取られて脅されたというで無しと、
角刈りの似合いそうな厳ついお顔を男臭い笑みにてほころばせ、

 「ムサシさん ありがとぉ、ばいば〜いvv」

大好きなお兄さんに抱っこされて御機嫌な、
セナくんからの大きなバイバイにも手を振り返すと、
そのまま発進してった おじさんお兄さんだったけれど。
荷台に資材を乗っけたトラックが去って行くのを見送りながら、
お顔は笑顔のまんまの桜庭さん、

 「……さては、葉柱くんと喧嘩したとか?」
 「してねぇよ。」

俺がいつもいつも
ルイばっかアテにしてると思い込んでんじゃねぇっての…と。
肉薄な口許ひん曲げて、
何だかややこしい不貞腐れ方をする妖一くんなものだから、

 “喧嘩じゃあないにせよ、
  葉柱くんじゃあ不味いって事情があるってか?”

こっちだって付き合いが長いのは伊達じゃない。
ましてや、あの暴走族のお兄さんとの付き合いは、
妖一坊やの知己たちの中では一番に密接かも知れずで。
だから判るのが、

  単なる“足代わり”以上のお付き合いだってこと。

先程の武蔵さんのように、
車が要るからとタクシーのように利用するってだけじゃあなくて。
何処へどんな事情で向かうのかまでを、
わざわざ言わずとも察してしまうような相手だから。

 “だから、今日は呼べなかったってか?”

関東大会に於いては王城の対戦相手にもなりうる、
賊学カメレオンズの主将さんであり。
今大会、向こうもベスト8へ勝ち残っているけれど、
スタジアムの都合か、試合は来週なのだとか。
なので傍らにいなきゃ、練習を監督しなきゃという逼迫よりも、
自分の事情を優先しちゃった坊やなのだろうが、

  “…………………う〜ん?”

それでも、いやさ それだったらさ。
連休なんだから、一緒にいたいって思うもんじゃないのかな。
練習にかこつけてであれ、
そうやって仲良くごちゃごちゃするのが一番楽しい頃合いの
お付き合いしてるくせにネと。
小学生と高校生の二人を差してのお言葉とは、
到底思えぬ描写にて案じてから。
何だろ何でだろ何があったんだろと、
それこそ大人げなくも想像を巡らせておれば、

 「あのね、ヒル魔くんたら、
  フォークダンスがイヤだから運動会出ないってゆーの。」

 「あ…、こらっ!」

抱えられたまんまひょいっと立ち上がった進のお胸という高みから、
抱っこのまんまへ嬉しそうにはしゃぎつつ、
そぉんな爆弾発言しちゃったセナ坊だったのへ、
小悪魔様はたちまち“う〜むむ”と口許を曲げてしまったが、
そこへとすかさず、

 「マイムマイムくらい、いいじゃない。」

他の子とお手々つなぐことになっても、
葉柱のお兄さんだって怒んないと思うよと、
要らんことを付け足したもんだから、

 「そ、そんな理由じゃねぇっ!////////」
 「だったらどうして赤くなる。」

しかも、進さんまでもが畳み掛け、

 「〜〜〜〜〜。//////」
 「おおう、合わせ技で一本取ったぞ。」

後が怖いとか考えてないんだろな、
そしてそんな彼らだからこそ、
ヨウちゃんもしょうがねぇなと報復には出ないんだろなと。
秋空のすがすがしさにも負けぬ、
天然記念物さんたちのタッグの恐ろしさへ、
あらためて恐れ入った、桜庭さんでもあったそうな。


  そして、
  このくらいはきっちり読まれていたか、
  それとも、サボリはいかんとお父さんが密告したか。
  何年か振り、10月10日にきちんと重なった体育の日に、

  「運動会まで送ってくぞ〜」と

  葉柱さんが王城学園まで迎えに来てくださったのも、
  言うまでもなかった段取りだったり致します。
(笑)





   〜Fine〜  11.10.08.


  *いい風の吹く気候になりましたね、
   油断して裸足でいて、
   風邪とか拾わないよう、ご自愛くださいませね?

ご感想はこちらvv めーるふぉーむvv

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